図書館司書の経験を活かし、日常生活に役立つ情報や疑問について文献調査や専門機関への取材・実験などを行いながら日々お役立ち情報を発信しています。 6歳の男の子ママとしての立場から子育てに役立つ記事も執筆♪
ホーロー鍋にも実は種類が。意外に知らない「ホーロー鍋」の世界
ホーロー鍋は、ホーロー素地といわれる金属鍋の形に成形され、ガラス質のうわぐすりがしっかり付着するように表面のサビや油が落とされます。そして、ガラス質のうわぐすりをかけて乾燥した後、高温で焼成されます。
そのため、熱伝導のよさや優れた加工性・耐久性をもつ金属のよさ、サビや酸に強いというガラスのよさを持ちあわせています。
<ホーロー鍋の特徴>
- 密閉性が高く、熱が逃げにくい
- 焦げつきにくい
- 中まで火が通りやすい
- 酸に強い
ホーローに使われる鉄には、鋼板と鋳物(いもの)があり、ホーロー鍋も大きくこの2つに分類できます。
鋼板ホーロー鍋って?
鋼板ホーロー鍋は、「鋼板」という名前のとおり板状の金属を、切断したり溶接したりして鍋の形に成形したものです。
鋳物と比べると、厚みが薄いため熱の伝わりが早いのが特徴。
一気に調理することが可能なので、早くゆでたいときに重宝します。
軽く扱いやすいため、普段使いに向いている鍋です。
ただし、保温・保湿効果はあまりなく、熱しやすく冷めやすいというデメリットも。
煮込み料理に使うときには、煮崩れに気をつけた方がよいでしょう。
鋳物(いもの)ホーロー鍋って?
鋳物ホーロー鍋は、溶かした鋳鉄を型に流し込んで鍋の形に成形したものです。
有名なル・クルーゼも鋳物ホーロー鍋です。
鋼板より厚みがあり、保温性に優れているので煮込み料理にぴったり。
ゆっくりと火が通るため食材の崩れが起きにくく、料理の仕上がりがきれいなのも鋳物ホーロー鍋の魅力です。
鋼板よりも重量があるため扱いづらいですが、そのぶん耐久性に優れているので、長く大切に鍋を使い続けたい方におすすめです。
ホーロー鍋に向いている料理・向いていない料理は?
ホーロー鍋の大きな特徴として、においがつきにくいという特徴があります。
金属のにおいが食材につかず、鍋にも食材のにおいがつかないので、料理がおいしく仕上がります。
一般的な金属製の鍋と違って酸に強いため、酸味の強いお酢を使った料理や、ジャムを作る用途に向いています。
ちなみに、アルカリや塩分にも強いため、鍋だけでなく保存容器にもホーローは使われています。
ホーロー製の容器は、味噌や梅干しの保存にもおすすめです。
一方でホーロー鍋に向いていない料理もあります。油が少ない状態で炒め物をすると空だきに近い状態になってしまい、鍋を傷めることも。
なるべく多めの油で炒めるか、炒め物自体を避けたほうがよいでしょう。
ホーロー鍋で揚げ物もできるって本当?
揚げ物に使う鍋と言うと、ステンレスや鉄などの天ぷら鍋を思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも実は、ホーロー鍋も揚げ物鍋に向いている素材です。
その理由は、熱伝導のよさ。すばやく高温にすることができるため、カラっと揚げられます。
鍋の内側が白いため揚げ物の色味がわかりやすいのもうれしいポイントです。
しかも保温性があるので、食材を入れても温度が下がりにくいというメリットも。
実際にホーロー鍋で揚げ物をしてみたところ、調理のしやすさだけでなく後片付けのラクさにも驚きました。油によるベタつきが残らず、さっと洗うだけできれいになりますよ。
ただし、ひとつだけ気になった点も。
IHコンロでホーロー鍋を使うときに「揚げ物モード」などの自動調理機能や強火の設定にすると、温度が上がり過ぎて「高温エラー」になってしまうことがあります。
IHコンロでホーロー鍋を使う際は、火加減に十分気をつけてくださいね。
ホーロー鍋のお手入れ方法。焦げついたときは?
ホーロー鍋には「焦げにくく丈夫」という特徴があります。
表面がガラス質なので汚れが落としやすく、普段のお手入れについては、中性洗剤とスポンジで洗ってから水分を拭き取るだけでOKです。
しかし、うっかり鍋を焦がしてしまった場合、普段のお手入れではなかなか落とせません。
間違った対処方法をしてしまうと、鍋が傷ついたり色素沈着を引き起こす場合も。
ここでは、ホーロー鍋が焦げついてしまった場合のお手入れ方法について、くわしく説明していきます。
ホーロー鍋が焦げついてしまったときの落とし方
ホーロー鍋が焦げついてしまったときは、重曹を使ったお手入れが効果的。
鍋に水を張って重曹を入れて煮立たせることで、炭酸ガスが発生し、こびりついた焦げや汚れを浮かび上がらせてくれます。鍋を傷めずにするっと落とせるので、ぜひ試してみてください。
1.水と重曹を入れる
汚くなったホーロー鍋を水に入れてから、小さじ2〜3杯の量の重曹を入れます。
2.フタをし、加熱する
フタをした後、とろ火で10分程度加熱しましょう。
3.火を止めて放置する
火を止めて、お湯を捨てずにフタを開けてそのまましばらく置いておきます。
4.放置した後に洗う
しばらく放置したあと、中性洗剤とスポンジでやさしく丁寧に洗ってください。
鍋の汚れを無理やり落とそうとごしごし強くする方がいますが、無理やり取り除こうとすると、ホーロー面を傷つけてしまうかもしれません。なので、無理にこすらず、重曹を使ってゆっくりと丁寧に汚れを落とす必要があります。
もし、ひどい汚れの場合は、この工程を2~3回繰り返すときれいに落とすことができます。
がんこな焦げつきや汚れの落とし方
重曹で落ちないひどい焦げや汚れについては、セスキ炭酸ソーダを使ったお手入れ方法がおすすめです。セスキ炭酸ソーダは重曹よりも強いアルカリ性のため、より強力に酸性の汚れや焦げつきを落とせます。
手順は、先ほどの重曹でのお手入れとほぼ同じです。
1.水とセスキ炭酸ソーダを入れる
汚くなったホーロー鍋を水に入れてから、小さじ2〜3杯の量のセスキ炭酸ソーダを入れます。
2.フタをし、加熱する
フタをした後、とろ火で10分程度加熱しましょう。
3.火を止めて放置する
火を止めて、お湯を捨てずにフタを開けてそのまましばらく置いておきます。
4.放置した後に洗う
しばらく放置したあと、中性洗剤とスポンジでやさしく丁寧に洗ってください。
鍋の外側についている汚れには、セスキ炭酸ソーダ水を含ませたキッチンペーパーを貼っておくのも効果的。
そのあと、重曹でこすり洗いをすることで、効果的に鍋の外の汚れを落とせます。
長く愛用するために。ホーロー鍋でやってはいけないこと
お気に入りのホーロー鍋は、正しく使ってなるべく長持ちさせたいもの。
ホーロー鍋を長く使うためには、いくつかの「やってはいけないこと」があります。
特に、物理的な衝撃に弱いので、以下の7つのことに気をつけてください。
ぶつけない・落とさない
表面がガラス質のため、ぶつける・落とすなどで強い衝撃が加わると、ガラス質の部分が割れたりヒビが入ったりと鍋が傷つく原因に。ガラス質が傷つくと、下地にある金属部分が露出してサビが出やすくなってしまうため、扱いには十分気をつけましょう。
空だきしない
鍋に食材や水を入れずに煙が出るまで加熱してしまうことを「空だき」と言います。
中身がない状態で加熱すると急激に温度が上がるため、ガラス質のヒビ割れやはがれ、ホーロー鍋の変形などの原因になります。
万が一、空焚きしてしまった場合は慌てずに自然に温度が下がるのを待ってからお手入れしましょう。
急激に冷やさない
空だきしたり焦げつかせたりで、慌てて水をかけてしまったことはありませんか?
実は、熱い状態の鍋に冷たい水をかけてしまうのはNGです。
ホーローは急激な温度変化に弱いため、急に冷やすとガラス質を傷めてしまいます。普段のお手入れでも、調理後の鍋がちゃんと冷めた状態になってから洗うようにしましょう。
金属たわしやクレンザーを使わない
意外とやってしまいがちなのが、鍋の焦げつきを取ろうと金属たわしやクレンザーを使ってしまうこと。スポンジで焦げつきが落ちない場合は、表面を傷つけにくい木や竹製のヘラなどでこすってみましょう。
焦げつきがひどく気になる場合は、先ほどご紹介した重曹やセスキ炭酸ソーダを使ったお手入れ方法を試してみてください。
また、フライ返しやヘラなど金属製の調理器具もガラス質の表面を傷つけることがあるため、避けるようにしましょう。
電子レンジで使用しない
ホーロー鍋は直火やオーブンには対応していますが、電子レンジでは使用することができません。
電子レンジは電磁波の力を利用して食材を温める仕組みですが、ホーローは電磁波を反射してしまうため温まりません。
また、反射した電磁波で電子レンジに負荷がかかって故障の原因となることもあるので、絶対に避けるようにしましょう。
ホーロー鍋を買うときに。失敗しない選び方
いざホーロー鍋を買おうと思うと、意外とさまざまな種類があり、選び方に迷ってしまうことも。
つい、おしゃれさやかわいいデザインなど見た目の好みで決めてしまいがちですが、買ってから後悔しないために、いくつか確認しておきたいことがあります。
ホーロー鍋を選ぶときは、ぜひ下記の5つのチェックポイントについて確認してみましょう。
【チェック1】サイズの確認
ホーロー鍋に限らず、使いやすい鍋の大きさを選ぶことは重要です。
料理のメニューや人数など、用途に合わせて鍋のサイズを選びましょう。
- 12cm〜15cm……少量のソース作りや離乳食づくりに。
- 16cm〜18cm……1〜2人分の料理に。
- 22cm以上……3〜5人分の料理に。
また、大きさだけでなく「深め」「浅め」なども併せてチェックしましょう。
一般的な煮込み料理には深めの鍋がおすすめですが、パエリヤなどを作りたいときには浅めの方が使い勝手がよいでしょう。
【チェック2】鋳物or鋼板かを確認
特徴のところでも触れましたが、よく作る料理に合わせて鋳物タイプか鋼板タイプかを選ぶと失敗がありません。煮込料理メインで使うなら鋳物がおすすめ。
ゆでる・温める・揚げるなど、あれこれ手軽に使いたいときには、手軽に使える鋼板タイプがおすすめです。
鋼板のホーロー鍋おすすめアイテム
富士ホーロー キャセロール
人気の「Cotton」シリーズのキャセロール鍋。
鋼板でありながら、じっくり、コトコトと長時間煮込む料理も得意。フタを外せばオーブン調理もできます。
【チェック3】対応している熱源の確認
ホーロー鍋は、IHで使用できるものがほとんどですが、ごくまれに非対応のものも。
不安な場合は念のため、IH対応の表示があるかを確認しておいた方がよいでしょう。
IHはトッププレートとの接地面(鍋底)のみが加熱される仕組みのため、ホーロー鍋が実はガス火よりもIHと相性がいいとも言われています。
ただし、IHはガス火と比べて高火力なので、強火など高温で使用するとホーローがはがれてしまう可能性も。IH対応のものでも、調理する際の火加減には気をつけて使いましょう。
また、ホーロー鍋の中にはオーブン調理が可能なものもあります。料理の幅が広がるので、気になる方はオーブン調理に対応しているかもチェックしておきましょう。
IH対応のホーロー鍋おすすめアイテム
ホーロー両手鍋 オニキス
光沢がきれいなブラックオニキスカラーのホーロー鍋です。
鋼板ホーロー製でIH200Vに対応。フランジ構造で吹きこぼれにくいです。
調理の具合が分かりやすい、強化ガラスぶた製。つまみ部分には菜箸なども置けて使い勝手も便利です。
【チェック4】フタの密封力の確認
意外と知られてない、ホーロー鍋選びの大事なポイントは、フタの密封力。
特に余熱調理や無水調理などを行いたい場合には、フタに密封性がないと、蒸気が逃げ出して鍋の温度が下がってしまいます。
鋳物ホーロー鍋であれば、もともと保温性が高く、フタ自体にも重みがあるので、しっかりと密閉できます。
密閉力のあるホーロー鍋おすすめアイテム
ボン・ボネール ココット
厚手の鋳物ホーロー鍋ならではのムラのない熱まわりと保温性の良さを実感できます。
重い蓋が素材から出る水気を逃さないため、少量の水分で素材本来の味わいを存分に引き出します。
【チェック5】扱いやすいどうかの確認
ホーロー鍋の中には食洗機対応なものや、調理中に中身を確認しやすいガラスぶたのものなど、特別な機能のあるタイプもあります。
自分にとって扱いやすい鍋であるかどうかも、ぜひ確認しておきましょう。
たとえば、普段から愛用するうえで「お手入れが簡単か」ということも大事。
ホーロー鍋自体に重量があると、洗うときにもひと苦労です。洗い物が面倒だと感じる方は、なるべく軽量タイプのものや汚れがつきにくい加工が施されたものを選ぶことをおすすめします。
また、長く使いたい場合はアフターサービスが備わっている製品を選ぶと、より使いやすくて安心です。迷った場合は人気ブランドから選んでみるのもよいかもしれません。
代表的なホーロー鍋のブランド
ホーロー鍋にはいくつかの人気ブランドがあります。それぞれ他にはない魅力があるので、この機会にぜひチェックしておきましょう。
■ル・クルーゼ Le Creuset
1925年にフランスに誕生した、世界的な人気ブランドである「ル・クルーゼ」。
子から孫へ、何代も受け継がれるほどの丈夫さも魅力のひとつ。重みのある鋳物製のホーロー鍋で、熱の伝わり方にこだわりを持って作られています。特に特徴的なのはドーム型のフタで、鍋のなかに広がる蒸気で料理がおいしく仕上がります。
■ストウブ STAUB
世界中のシェフからも愛用される「ストウブ」。
ホーローならではの高い蓄熱性はもちろん、おいしさを深める秘密はストウブにしかない蓋裏の突起部分にあります。素材本来の旨味を含んだ蒸気がじっくりと鍋の中で対流した後、その突起を伝って食材に戻ってくるため、旨みを逃さずふっくらジューシーな仕上がりに。
■ダンスク DANSK
実用的かつカラフルでおしゃれなホーロー鍋で有名な、料理好きにも大人気の「ダンスク」。
表面に超硬質ガラスコーティングが施されているため、においや汚れに強く焦げつきにくいのも特徴。和にも洋にも合わせやすい、北欧テイストのデザインも人気の秘密です。
■ハニーウェア
1947年創業の琺瑯専門メーカー・富士ホーローの中でも特に人気のブランド「ハニーウェア」。
主材のほうろう用鋼板と釉薬は、ともに日本メーカーの材料を使い、完成した製品は一貫して高い品質を保っています。使いやすさはもちろん、ポップな色使いや昭和レトロなデザインが多く、思わずそろえたくなるかわいさも魅力。
■バーミキュラ
「世界一、素材本来の味を引き出す鍋」をコンセプトに熟練された職人の高度な技術により作り上げられた鋳物ホーロー鍋ブランド。 非常に高い気密性が特徴で「無水調理」が可能。素材本来の味や栄養を損なわずにおいしく調理できると人気です。
時代を超えて愛されるホーロー鍋
扱いやすさでいうとステンレス鍋にかなわないかもしれませんが、ホーロー鍋は煮込み料理などじっくりと火を通したい料理にとても優秀で、料理のプロからも長年愛されています。
この機会にぜひ、あなたもお気に入りの鍋を見つけて、大切に使い続けてくださいね。
また、ホーロー鍋で作った料理をもるのにぴったりな「冬の食器」を多数紹介しています。
ぜひご覧ください。