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【フライパン比較】鉄vsステンレス!焦げつきやすさを検証。実験でわかった使い方のコツ

【フライパン比較】鉄vsステンレス!焦げつきやすさを検証。実験でわかった使い方のコツ

キッチン

何となく料理上級者向けの印象で、扱いが難しそうに思われがちな鉄やステンレスのフライパン。
フッ素樹脂加工などコーティング系のフライパンに比べて「くっつきそう」というイメージの方が多いのではないでしょうか?
今回、鉄製とステンレス製のフライパンを使って検証。実験からわかった使い方のコツとは?
フライパンの買い替えを検討している方、必見です。

家事のコツや収納術、インテリアやおでかけにまつわる話などを通して「わたしらしい暮らし方」をご提案します

コーティングなしのフライパンの素材の種類って?

コーティングされていないフライパンには、アルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、銅などがあります。

ハウジーマガジン(旧くらべルート)では、その中でも特に人気の高い2つの材質「鉄」と「ステンレス」のフライパンをピックアップ。
実際に実験に使うのは、下記の2つです。

鉄製「ネオキャスチール」とステンレス製「ビタクラフト オレゴン」を比較
  • 1)鉄製:ネオキャスチール(株式会社タマハシ)
  • 2)ステンレス製:ビタクラフト オレゴン(ビタクラフトジャパン株式会社)

これらはコーティングがはがれるといった心配がないので、一生ものともいわれるフライパンです。

それぞれのフライパンの特徴をみていきましょう。

【鉄vsステンレス1】対決アイテムの特徴は?

<鉄製フライパン代表は……>

ちなみに今回、鉄製のフライパンの代表として使うのは「ネオキャスチール(26cm)」。

<p>ネオキャスチール(26cm)</p>

ネオキャスチール(26cm)

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鉄製フライパンでは必ず行う作業「空焼き」と「油ならし」がいらないフライパンです。
シリコン塗装がしてあり、予熱をして油を塗って使うというのを繰り返すうちに、酸化皮膜ができてくっつきにくくなるのだとか。

<ステンレス製フライパンの代表は……>

ステンレス製フライパンの代表として実験で使うのは、「ビタクラフト オレゴン(25.5cm)」。

<p>ビタクラフト オレゴン(25.5cm)</p>

ビタクラフト オレゴン(25.5cm)

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持ってみると、鉄フライパンも重いですが、こちらは、さらにずっしりという感じ。

ビタクラフト オレゴンは全面多層フライパン

こちらはステンレス製とはいうものの、実は2層のステンレスの間に3層のアルミがはさまれている全面多層フライパンです。

熱伝導のよいアルミと、耐久性のよいステンレスが合体したフライパンなんですね。

【鉄vsステンレス】事前準備って必要?それぞれの素材の特徴は?

<鉄フライパンは……>

今回の鉄フライパンの代表選手「フライパンは特別ですが、通常の鉄フライパンに必ず「空焼き」をしてから「油ならし」が事前準備として必須です。これは、くっつかない鉄フライパンにするための大事な作業です。

簡単に方法をご説明しますね。

  • 空焼きの方法
    フライパンが玉虫色になるまで、強火で空焼きし、火を止めます。酸化被膜をつくり、油をなじみやすくするために行う作業です。
  • 油ならしの方法
    フライパンが手で触れるくらいに冷えたら、油をフライパンの3分の1くらいそそぎ、弱火で5分くらい熱します。そのあと、油を油ポットに戻して、キッチンペーパーで、油をすりこみます。

くわしい方法については、以下の記事でご紹介していますので、参考にしてみてください。

>> 使い始めはどうする?鉄フライパンの「空焼き・油ならし」の方法

さらに、鉄フライパンは調理前にも油を必ず引く必要があります。↓ ↓

鉄フライパンを使う前の準備「油を引く」

<ステンレス製フライパンは……>

鉄フライパンに必要な「空焼き」や「油ならし」といった事前準備は必要なし。

ただし、調理前する前にはいつも予熱確認が必要です。
具体的な方法は、「水滴を落としてみて、水玉となってコロコロ状態」になるかどうか。
水滴が転がる=予熱OKのサインなので、水滴を落としてから調理をスタートしてくださいね。

ステンレス製のフライパンに油を引く必要があるかどうかですが、基本的には油を引く必要あり。

ステンレス製フライパンも油を引く必要がある

ただ、今回使う「ビタクラフト オレゴン」に関していえば、無油調理ができます。
つまり、食材自体に油分がある肉については、お肉自体の油のみで調理ができるんです。余分な油を使わないので、ヘルシーですね。
食材自体に油分のない卵料理などは油をひく必要あるので、注意してくださいね。

【鉄vsステンレス】薄焼き卵を焼いて、くっついたり焦げたりしないか検証

鉄製、ステンレス製のフライパンを使う時のポイントをおさえたところで、いよいよ、くっつかないかを調べるために、薄焼き卵を焼いてみて検証をします!くっつくとすぐに破れてしまう薄焼き卵。きれいに焼ければ、卵が「フライパンにくっつかない」ということになります。

実験は、それぞれのフライパンを140度に熱し、溶いた卵を流し入れて焼いていきます。その際、「それぞれのフライパンの正しい扱い方」にきっちり沿って行っています。

鉄製フライパンで、薄焼き卵を焼くと……

フライパンの焦げつきやすさの検証実験「鉄製フライパンで卵を焼く」

卵の表面が固まったところで、フライ返しを、そーっと入れてみました。

くっついていない様子。お皿にスムーズに移すことができました。

フライパンの焦げつきやすさの検証実験「鉄製フライパンの薄焼き卵の仕上がり」

薄焼きたまごは、少し焦げ目のある仕上がりになりました。

ステンレス製フライパンで、薄焼き卵を焼くと……

フライパンの焦げつきやすさの検証実験「ステンレス製フライパンで卵を焼く」

卵の表面が固まったところで、フライ返しを入れてみると……薄焼きたまごはくっつかず! こちらもお皿にスムーズに移すことができました。

フライパンの焦げつきやすさの検証実験「ステンレス製フライパンで焼いた薄焼き卵の仕上がり」

焼きムラもなく、きれいに仕上がりました。

実験の様子は、以下の記事で紹介しているので、ぜひチェックしてください。

>> 【比較実験】くっつかないフライパンを探せ!素材やコーティングの違う6種類で検証

【鉄vsステンレス】薄焼き卵の仕上がりの結果まとめ

鉄製フライパンも、ステンレス製フライパンも、ポイントをおさえれば「くっつかない!」はクリアできそうですね。

実験結果を、表にまとめて見てみましょう。

鉄製とステンレス製フライパンの薄焼き卵の仕上がり比較表

仕上がり結果には、ずいぶん差が出ました。

同じ中火で焼いたのに、鉄製フライパンの「ネオキャスチール」で焼いた薄焼きたまごには、焦げ目がつきました。焦げ目がついたらダメ!ということではないですが、どうして焦げ目がついたのか気になる……。

無視できないのは、フライパンの材質。
フライパンの材質によって、熱の伝わり方に違いがあるようですね。

ということは、焦げ目がついた鉄のほうが熱が伝わりやすいってことなのかも?

【鉄vsステンレス】フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験

鉄のほうがステンレスより熱が伝わりやすいって、ほんと?ということで、いざ実験!

実験の仕方

鉄製の「ネオキャスチール」と、ステンレス製の「ビタクラフト オレゴン」を1分間熱して、温度を計測してみます。
鉄の方が温度が高ければ、熱が伝わりやすいといえますね。

フライパンの熱の伝わりやすさの比較実験「温度計測するデジタルサーモメーター」

温度計測には、デジタルサーモメーターという、赤外線を当てて温度を測る温度計を使用します。

フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験「フライパンを1分間中火で熱する」

フライパンを、1分間中火で熱します。

フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験「フライパンの中央とフチの温度を計測」

フライパンの中央と、ふちに近い部分の温度を測ります。
中央とふちに近い部分の2か所を計測することで、フライパン全体に、熱が伝わっているのかどうかをみます。

赤い光が見えますね!ふちに近い部分はこのあたり。

鉄製フライパンの中心部分とふちの温度の違いは?

フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験「鉄製フライパンのふちと中央の温度差」

鉄製の 「ネオキャスチール」は、中央の温度が169.0度。ふちに近い部分の温度が、113.6度でした。
中央とふちに近い部分の温度差を計算すると、169.0-113.6=55.4なので55.4度

温度の差が結構ありますね。
でも、ガスの火元から近いフライパン中央と、ガスの火元から遠いフライパンのふちに近い部分に、温度差があるのは当然といえば当然。

ステンレス製フライパンの中心部分とふちの温度の違いは?

フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験「ステンレス製フライパンのふちと中央の温度差」

ステンレス製の 「ビタクラフト オレゴン」は、中央の温度が、42.9度で、ふちに近い部分の温度が、37.5度
中央とふちに近い部分の温度差は、5.4度でした。
あまりにも温度が低くてびっくり!

それに、中央とふちに近い部分の温度の差が5.4度ですよ!
温度差が小さいことにもびっくりです。

【鉄vsステンレス】熱伝導率と熱効率がよいのは?

鉄製の「ネオキャスチール」は、ステンレス製の 「ビタクラフト オレゴン」より、圧倒的に熱が伝わりやすいということが分かります。

フライパンの熱の伝わりやすさを比較実験「鉄製フライパンとステンレス製フライパンの温度比較」

中火で1分間熱すれば、食材を入れる予熱温度としては最適。
ただ、このまま中火で熱し続けると、熱が伝わりやすいので、どんどん温度が上昇するということに……。

調理する際、食材を入れると、いったんフライパンの温度は下がりますが、火加減には注意が必要。焦げの原因になります。

ステンレス製の 「ビタクラフト オレゴン」の中央の温度は42.9度と、手で触れるくらいの温度。鉄製の「ネオキャスチール」より、温度が伝わりにくいことが分かりました。

でも、中央とふちに近い部分の温度差5.4度に注目!
鉄製の「ネオキャスチール」の温度差55.4度とは圧倒的な差。

温度差が小さいのは、フライパン全体にまんべんなく熱が伝わっている証拠
これって、実はすごいことなんです!

薄焼きたまごの、きれいな仕上がりもうなずけます。
ステンレスは、熱は伝わりにくいけど、熱を効率よく伝えてくれる材質なんですね。
特に、 「ビタクラフト オレゴン」のようなステンレス製で多層のものは、なおさらです。

多層構造なので、「予熱に時間がかかりそう」と心配されるかもしれませんが、中火で2分間熱すれば、調理がスタートできます。

結果をまとめると

  • 熱が伝わりやすい(熱伝導がいい)のは鉄製
  • 熱効率がよいのはステンレス製

ということがわかりました!

ちなみに、コーディングされているフライパンは?

実験では、フライパンを熱して温度をはかり、熱の伝わりやすさを比べたわけですが、熱の伝わりやすさは、熱伝導率という値で表され、物理の公式で計算できるそうです。

熱伝導とは、温度の高いほうから低い方へ、熱が移動するということ。
実験に当てはめると、ガスの火の熱が、フライパンへ伝わって移動していくということです。

今回は、ステンレスより鉄のほうが熱伝導が良いということが分かったわけですが、ほかにもアルミが熱伝導が良い素材として知られています。

フッ素樹脂加工のチェリオットフライパン

フッ素樹脂加工のチェリオットフライパン(株式会社コーベック)の本体の材質はアルミ。中火で1分間熱した時の中央の温度は、201.7度でした。

熱伝導がよいアルミ素材のフライパン「グランマーブル」

コーティングのあるフライパンは、本体にアルミが使われていることが多く、こちらのグランマーブル(和平フレイズ株式会社)も本体はアルミ。中火で1分間熱した時の中央の温度は、200.4度だったので、鉄よりもアルミは熱伝導が良いといえますね。

どう使い分けるのが正解?コーティングのないフライパン、使い方のコツ

コーティングされてない、鉄製やステンレス製のフライパンも、きっちりと下準備をして使えばくっつかず安心して使えることがわかりました。
また鉄製とステンレス製では「フライパンの材質によって熱の伝わり方に違いが出る」こと、「熱伝導(熱効率)の実験では熱が伝わりやすいのはステンレスよりも鉄」だということも判明!

今回わかった使い分けと使い方のコツは以下です。

<鉄製とステンレス製のフライパンの使い分け>

  • ステーキやハンバーグは焦げをつかせたいものは、鉄製フライパン
  • ムラなく焦げ色をつけたくないときは、ステンレス製フライパン

<鉄製とステンレス製のフライパンの使い方のコツ>

  • 鉄製フライパンは初めて使用する前に「空焼き」「油ならし」をする。毎回、調理前には油を必ずひく
  • ステンレス製フライパンは、調理前「水滴を落としてみて、水玉となってコロコロ状態」になるのを確認する

今度新しいフライパンを探す際には、上記を参考にして探してみてくださいね。
この記事が、普段作られる料理にあった使いやすいフライパンに出合うきっかけになればうれしいです。